『28日で即戦力!サーバ技術者養成講座』をやってみた

目次
はじめに
こんにちは、CloudBuildersのsugawaraです。
みなさんは日々サーバの構築や運用などされているでしょうか?自分は前職がオンプレのネットワークエンジニアということもあり、サーバの経験があまりありません。実務でもLambdaなどのサーバレスが多く、EC2といえば踏み台くらいでした。どこかでガッツリとサーバ構築の経験を積みたいなと考えていたとき、自分にぴったりの書籍が発売されることを知りました。
さっそく会社Slackのtimesにて下記のようなつぶやきをしましたところ、弊社代表の池西さんより買ってあげるよと即レスいただきました!
自分だけ買ってもらうのもなんだか気が引けたので、希望者を募って計14冊分を購入していただきました。これまで社内輪読会も行ってきましたが、ハンズオン中心の書籍ということもあり、今回は個人で進めていってわからないところは輪読会チャンネルで相談するという形式を取りました。
さすがに言い出しっぺの自分が読了しないのはまずいと思い、2月の朝活の時間と終わらないときは日付が変わるくらいまではひたすら本書籍と睨めっこしていました。なかなか難しく、心が折れそうになったときもあったのですが、なんとか無事に2月で完走できました。
今回は『28日で即戦力! サーバ技術者養成講座』に取り組んでみた感想などを残していきたいと思います。
目次と概要
下記は本書籍の目次になります。
第1日 サーバ環境の基礎
第2日 利用技術の基礎-Windows
第3日 利用技術の基礎-UNIX/Linux①
第4日 利用技術の基礎-UNIX/Linux②
第5日 サーバ導入技術の習得
第6日 OSおよび学習環境の自動インストール
第7日 サーバアプリケーションの仕組みと構築
第8日 メールサーバ
第9日 WWWサーバとプロキシサーバ
第10日 Sambaとその他のレガシーサーバ
第11日 復習テスト
第12日 セキュリティシステムの仕組みと構築
第13日 SSL
第14日 SSHトンネル
第15日 ファイアウォール
第16日 SSH公開鍵認証接続
第17日 半日構築挑戦テスト
第18日 IPsec
第19日 自動侵入検出システム
第20日 データベースサーバとその応用
第21日 セキュリティ強化と応用
第22日 セキュリティ強化と応用(メールサーバ)
第23日 セキュリティ強化と応用(WWWサーバ)
第24日 SSHトンネルゲートウェイ
第25日 仮想化
第26日 他のサーバOS
第27日 運用管理技術
第28日 ドメイン導入手続き
目次を見てわかるように、1日1章分を読み進めて28日で完成させる形式となっています。2007年に初版が出て以降、改定を重ねて2025年に今回の改定4版になりました。これだけ息の長い書籍はそう多くはないと思われます。
本書籍では、Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 9 互換のサーバOSを用いて、28日間でサーバ構築と運用管理の基礎を手を動かしながら実践的に学べます。DNS、メール、WWWなどのアプリケーション構築から、セキュリティ、ネットワーク、データベース、仮想化技術まで幅広く学習ができます。
なお、詳しい目次やページサンプルはこちらをご確認ください。
ちなみに著者の笠野英松さんのサイトはこちらです。気になる方はチェックしてみてください!
所感
ここからは1ヶ月間毎日取り組んでみた感想です。内容のレベル感と学習できることについてそれぞれ簡単にまとめます。
レベル感
本書籍の対象者は下記のようになっています。
- サーバ技術の初学者,サーバ技術を体系的に学びたい方
- 新人サーバ技術者の教育用テキストをお探しの方
- サーバ技術全般のリファレンスをお探しの方
したがって、新人技術者から中・上級技術者まで幅広く対象としています。しかし、正直、サーバ完全初心者にはかなりキツイのではないかと感じました。
以下は自分が感じる初学者にとっては難しい理由です。
- 説明があっさりしている
- vi(m)をがっつり使う
- 環境構築が難しい
一つずつ簡単に見ていきます。
説明があっさりしている
実際の画面キャプチャや図表、コマンドの実行結果が多く掲載されているため、次に何をすべきか、どうなっていれば良いかが視覚的にわかりやすいです。ただ、各技術に対しての説明があっさりすぎる印象があります。例えば、第01日目に情報ネットワークの歴史やOSI参照モデルの説明がありますが、どちらも片ページにも満たない説明量でした。用語が羅列されているだけで、わかりそうでわからないかもしれません。また、第09日目のwwwサーバとプロキシサーバについても、ハンズオンをメインとしているからか、全体的に説明が少ないのがもったいないなと感じました。
初学者の場合、本書だけではやや説明不足のため、他にも何か読む必要が出てきます。おそらく、少なくともLPICレベル1やCCNAの知識は予めある状態で取り組んだ方が効果的かという印象です。
viをがっつり使う
ハンズオン中、viでファイル操作をするが多いため、viに慣れていないとなかなか難しいかもしれません。書籍内では、第03日目にviの基本操作の説明が2ページ分、第04日目には実際にviコマンドを使ってみるという箇所があります。ただ、圧倒的に演習量が足りないと思われるので、それ以外にもvimtutorなどで学習をしておくことをおすすめします。
環境構築が難しい
書籍で推奨されている環境は、PC2台とハブ、ケーブルという構成です。2台使うことで、サーバとクライアントに見立ててハンズオンを実行していきます。PC1台でもVMWareなどを使えばハンズオンの実施可能は説明されていますが、そちらの詳細な手順は記載されていないため、自分で適宜読み替えていく必要があります。
自分は当初VMWare WorkStationを使って仮想環境で進めて行こうとしました。しかし、なかなかうまくいかなかったため、書籍の環境に合わせて個人Windows PC(サーバ)と会社Windows PC(クライアント)という2台構成で進めることにしました。
正直、この環境構築が自分には一番大変で、何度か心が折れそうになっていました。逆に言うと、この環境構築さえ乗り切れれば、あとは比較的スムーズにハンズオンが進むかと思います。
学んだこと
LPICなどの資格学習でなんとなく学習したことはあるが、実際に触るのは初めてということが多く、各ハンズオンは非常に勉強になりました。
特に個人的に良かったのは、下記のハンズオンです。
- USBにRHEL 9のインストールISOを書き込んで起動
- SambaやFTPによるファイルのやりとり
- DNSサーバの構築
- メールサーバの構築
USBにRHEL 9のインストールISOを書き込んで起動
今回初めてUSBにインストールISOを書き込み、RHEL9を起動させました。これまでVirtualBoxなどの仮想環境下でLinuxをいじることはあっても、物理マシンで直接Linuxを起動させることがありませんでした。インフラ系のエンジニアとして、やったことがないのはマズイと思っていたので、とてもいいきっかけになりました。また、資格勉強時によく出てきたmount/umountやlsblkコマンドなどを何度も繰り返し実行するのにちょうどよかったです。
SambaやFTPによるファイルのやりとり
これまで共有フォルダでのファイルのやりとりはしてきましたが、直接PC間でのファイルのやりとりとその設定はしたことがありませんでした。ハンズオンでは、SambaやTelnetのみならず、WinSCPやFFFTPを使ったファイルのやりとりなどもできます。普段あまり使わないかもしれませんが、一度は触って経験しておくのは大切ですね。
DNSサーバの構築
以前からDNS周りに苦手意識がありましたが、用語の整理や各種設定ファイル、コマンドのいい練習になりました。ただ、図が多く掲載されているのは良いのですが、まだ説明不足な気がしました。このあたりは知識としてしっかり定着させたいので、今後も定期的に再読したり、別の書籍も適宜読んでいきたいと思います。
個人的な課題図書↓↓
メールサーバの構築
GmailなどのSaaSが主流である現在では、一からメールサーバを構築する機会は少ないかもしれません。LPIC学習時にはメール技術についてはそこまで出題も多くはないため、さらっと流してしまっていました。
しかし、今回はPOP3やIMAP、SMTPといったメールプロトコルについて学び、postfixやdovecotなどのソフトウェアを実際に設定することで、メール送受信の仕組みや流れを体験することができました。今後に必ずしも直結するとは限らないですが、このあたりについてはもう少し深掘りをしていきたいと考えています。
個人的な課題図書↓↓
その他
本書籍のタイトルにある「即戦力」というキーワードですが、これをやり遂げたからすぐ即戦力!というのはちょっと難しいかもしれません。しかし、これをやり切ったら間違いなくインフラエンジニアとしてスタートラインに立つのではなく、その一歩、二歩先にはなりそうです。
計630ページを超える分厚い書籍のため、読み通すにはかなり時間がかかりますが、サーバの経験が少ないエンジニアにはとてもタメになる書籍です。
あまり知識がない中で一人でやると、挫折率が高いのではないか思われます。もし社内の新人研修用テキストとして使う場合、わからないところを聞けるメンターなどがいると良さそうですね。
なお、本書籍にはテストツールが付属しており、指示通りに設定できているかの簡易チェックができます。下記がテストの実行結果例です。自分の進捗状況の可視化や何が設定漏れしているか判断できるので、是非活用してみてください。
参考
出版時にはあった公式の補足情報ですが、いまはWebサイトから消えてしまっています。念のため、こちらに置いておきます。
おわりに
今回は『28日で即戦力!サーバ技術者養成講座』を紹介しました。サーバ完全初学者には思ったよりも難易度が高そうですが、実際に手を動かしてサーバ構築の経験ができるのはとてもいいと思います。興味を持った方は是非取り組んでみてください!